【鍛えられる環境】評価されなければ指導者としての成長はない
前回に引き続きPSTアカデミー3期生の高田さんのインタビューをお届けします。
(前回の記事は『【今が一番充実している】高卒でスペインへ渡り監督経験を積む』)
アカデミーをに卒業後、スペインのバルセロナに残りUEコルネジャというスペイン3部リーグに所属するクラブの育成年代で小学生のチームを率いる高田さん。スペインのクラブでは育成年代ではほとんどのチームにコーディネーターという名前の立場で担当の監督を評価したり、育成年代全体のプレーモデルを提示するような役職がありますがUEコルネジャはその例から外れることなく、しかも各カテゴリ(スクール、小学生、中学生、高校生)にコーディネーターを置いている組織作りには力を入れているクラブです。
高田さんは、2016ー17シーズンでチームを決めるときにはコーディネーターと面接をしてクラブに入ることが決まりました。その面接においてもコーディネーターが考えているプレーモデルを説明されたようです。また、指導者が成長するためには「評価をされることが重要」と語る高田さん。まさに指導者の評価をする人がコーディネーターであり、先生のような存在であるのです。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
今、UEコルネジャというクラブで第一監督でチームを率いていますが、どのような経緯でこのクラブにやってきたのですか?
昨年までフピテルというクラブで第二監督を担当させてもらっていたのですが、今シーズンは第一監督という立場に就き、経験を積んでいきたいと考えていました。そして昨シーズン終了後にに1チーム担当させてもらえるというお話をクラブのコーディネーターからいただいていましたのでこのクラブに居ようと考えていたのですが、夏に日本から帰ってきた時に担当する予定だったチームの選手集めも全然進んでいなかったことが発覚し、さらにコーディネーターの交代なども重なって、プレシーズンもちゃんとした状態で指導ができる状態ではありませんでした。「これはまずいな」ということでコーディネーターと話しをしてクラブを辞めさせてもらうことにして第一監督ができるチームを探していました。この時点ではコルネジャの選択肢があったわけではありません。チームを探しているうちに、コーチングスクールで仲が良かった同期の友人がたまたま今シーズンからコルネジャのインファンティルのチームを担当することとなり、話をしたらたまたまこのクラブのアレビン(小学校5、6年生)のチームで1チーム担当がまだ決まっていないということでコーディネーターの連絡先を教えてもらい、次の日にオフィスにいき面接をしてその日に去就が決まりました。
その日の面接では「どのレベルのライセンスを所有しているか?」や「監督としての経歴」を聞かれました。初めは、私は日本人ですし会ったこともない外国人で勢いだけの若造を採用するわけもないだろうと思っていたのですが、向こうも指導者を探しているようで会ったその日からPCを見せられ、プレーモデルの話が始まってしまったんです(笑)。「あ、もうそんな話が始まるんだ」と思い、これは採用が決まってるような雰囲気でした。その時は、所有しているライセンスの種類を聞かれて、私がレベル2を持っていることを知ったらすごく反応は良かったんです。
(高田さんが率いるチームの選手たち@UEコルネジャのプレゼンテーションにて)
ということは、周りの指導者はレベル2は持っている人は少ないのでしょうか?
周りのアレビンのカテゴリの指導者はレベル2を持っている人はほとんどいませんよ。それは結構大きいですね。レベル2というと「こいつやるな」目が変わってましたからね(笑)本当に良かったと思いましたね。
ということはスペイン国内でもレベル2を持っているということは価値のあるライセンスなのですね。
そうですね。正直それを言うまでは舐められてた感はありましたね。それでレベル2を持っていると話になったら驚いていました。日本人がレベル2を持っているというのは珍しいんでしょうね。しかしそれと同時に日本人への評価はかなりいいものがありました。これは今までバルセロナで指導をしてきた方々のおかげだと感じます。
それで面接をして、クラブがプレーモデルやメソッドを持っていることを知ったわけですよね。その時はどのようなことを感じましたか?
僕はフピテルというクラブにいてそのような経験もなかったですし、やはりコルネジャはしっかりしているなという感想です。コーディネーターが用意したプレーモデルの資料がパワーポイントで40ページにわたってデータとしてあったのですが、守備・攻撃・攻撃から守備の切り替え・守備から攻撃の切り替えという4つのモーメントでやるべきことが明確にあってそれがデータ化されていました。正直、面食らってしまったのですが冷静なふりをしていました(笑)。そしてコルネジャは基本的には1321のシステムで戦うよと言われたりして一通りの説明を受けたのですが、私はそのそのような経験は初めてだったので「これが大きなクラブのやり方なんだな」と思いましたね。今でもコルネジャのグラウンドに行く時は緊張します。どこのクラブに行ってもしっかりと仕事をしなければいけないのですがコルネジャは大きいクラブですからあのスタジアムに入った瞬間には今一度スイッチが入ります。
加えて第一監督を務めていることもあるのしょうか?練習する時も責任を全て背負っているのは監督です。
そうですね。昨シーズンは第二監督としてやっていましたが自分のやりたいサッカーがあっても第一監督に絶対的な権限があるわけで自分の意見が全て通るわけではありません。そういうこともあり、やっぱり第一監督をやりたいなと思っていました。第一監督を始めて3ヶ月経ちますがすでにすごく違いを感じますし、毎日のトレーニングでも自分が選手を鼓舞していかなければならない、試合でも先頭に立って引っ張っていかなければならないと責任感を感じます。それはサッカーの面でもですが人としても成長できると思います。毎日いい経験です。日本でも指導者としての経験もありませんですから初めての監督という経験が毎日が刺激的です。アレビンのチームにはとても感謝していますし、まだ良い結果が出ているわけではありませんが悪くはないので満足してもらってるわけではないとは思いますが保護者とも良い関係を作れていると思っています。
ではコルネジャのコーディネーターがプレーモデルを所有しているということですが具体的にはどのようなものか教えてもらえますか?
基本的には1321でプレーすることを求められています。でバリエーションとして2トップにして1312があります。加えて局面によって、例えば攻撃の局面でサリーダデバロン(ビルドアップの前進を図るアクション)を何パターンかだったり、あとはロングボールに対してのチャレンジアンドカバーの方法だったりとかが明確に資料として渡されます。多少のアレンジはしても良いのですが、基本的なベースはクラブから求められたものを実施して行く感じです。私の担当しているチームはスクールのようなレベルのチームですから基本的なことを大事にしています。火曜日の練習はコーディネーターが決めたものですし、練習中にグラウンドを周り口を出してくることもあります。うっとおしいと思うこともたまにありますが、アドバイスくれたりもするので良いと思いますね。下のチームでも試合をしっかりと見に来てくれて評価もしてくれます。負けた時にも修正点を指摘してくれますので見てくれているな、と感じます。
(7人制サッカーでの明確な指針となるプレーモデルがクラブに存在する)
ではコーディネーターは先生のような存在なのでしょうか?
そうですね。結構自分の意見を「これをやってほしい」ということが強いですね。
良い時は良い、悪い時は良くないと評価されることの重要性は感じますか?
そうですね。去年もフピテルにいた時には帯同していたチームが良いサッカーをしていたのにコーディネーターが見ていませんでした。そのため、監督は自分がどのような評価をされているのかがわからないと言っていました。確かにそうで、今はホームの試合は僕の試合を見てくれてコメントをもらえます。見られている感があり、監督としての存在を評価されるのは良いと思います。
では練習の前もミーディングをすると聞きました。どんなことをしていますか?
練習前に30分ほどミーティングをします。特に火曜日はコーディネーターが決めた練習を行うのでメニューとコンセプトの確認、コーディネーターが私たちに求めることの確認をします。木曜日は自分たちが準備した練習を実施するので、メニューについてはそこまで話しませんが毎週末のメンバーの確認が中心です。自分が作るメニューなので、そこに対しては介入せず言ってくることはありませんので自由はあります。
ちなみに今週の火曜日のテーマは?
今週の火曜日は、守備の組織についてで1vs2のときの数的不利の対応のしかたがテーマでした。それからサイドにボールがある時の自チームのスライドのポジショニングで、誰がボールへプレスをかけて誰がカバーリングをするのか?というポジショニングでした。そして火曜日のトレーニングがうまく機能していないと思ったらコーディーネーターが介入して来ますね。コーディネーターが決めたメニューとプレーのアイデアがあるのでうまくいっていない場合は入って来てプレーを止めて説明したりもします。そこで「ああ、こうやってやるんだな」と勉強できる時もあります。ただ、正直なところ週の2回のトレーニングうちの1回を決められたメニューでやるというのは窮屈に感じることもあります。その火曜日のトレーニングが試合から抽出された課題とマッチしている場合は良いのですが、そうでない場合は1時間が削られるのは大きいですね。実質自分がやれるトレーニングは残りの1回しかないのでもう少しやりたいと思うこともあります。
(選手のプレーに修正を入れる。もちろん全てはスペイン語で行われる)
やはりスクールのカテゴリなので全体のレベルを上げたいという意図なのでしょうね。指導者も若い人が多いのでその方法でベースを作って、そこで良い人材をさらに上のカテゴリに引き上げて行こうという狙いがあるのかもしれませんね。ではスペイン人のチームを率いているわけですが、比較はまだ難しいかもしれませんが日本と比べてどんなことを感じますか?自分がイメージしていた監督や指導者の仕事と比べてどうですか?
私は日本では選手しか経験はないのですが、一番感じることはスペインでは育成年代から戦術を教え込むということです。「この年代でこれをやるのか?」と毎日驚いていたくらいで実際日本で自分がやって来たことを振り返ると「何をして来たんだろうか?」と思います。今自分が担当しているアレビン年代(小学校5、6年生)で行なっているような戦術練習はやったことがありませんでした。ベンハミン年代(小学校3、4年生)から積み重ねて戦術を獲得していったら大人になったとき、また代表レベルでもそうなのですが差が出ているのではないかとも思います。小さな年代から戦術のことを考えながらプレーしていますし、そのようなことを要求されてプレーしていますね。
実際、テクニックレベルやコーディネーションのレベルは日本人よりは低いですが戦術をトレーニングしますよね。それについてはどう思いますか?
日本人は日本人で小さな年代でテクニックの反復をしますからそれはそれで良さが出ていますが、勝てないということはそれだけでは足りないということでしょう。戦術を優先するのか、テクニックを優先するのかという話になると思いますが実際に戦術を優先しているスペインは結果を出していますし、チャビやイニエスタのような選手が出てきていて、ワールドカップも制しているのでそう思ったら、チームとして毎日練習していくということが大事なのかなと思います。日本人が行なっているテクニカルな部分も大事だとは思いますが、それだけになってしまうと「上手い選手」にはなりますが世界で戦えるような賢い選手にはなれないだろうなと思います。ユース年代になってからあのようなことを学んでも遅いですし、アレビン年代からチームとしてのポジショニングなどを学ぶことなどを優先する方がよいのではないかと考えています。
それに加えて日本人監督としてですが、現役時代にはそこまで戦術のことを考えながらプレーしてこなかったと思いますが大変ですか?
そうですね。ですから、プレサッカーチームの日本語の予備授業(日本語でコーチングスクールの理論を学ぶ授業)を受講した時にいかに自分がサッカーを知らないかを痛感しました。ですから、選手としてサッカーを理解していなかったわけで、戦術としての練習をしていなかったということです。コーチングスクールに通うことで知識としてはかなり増えましたがとても苦労しました。今でも守備のメニューを作るときは苦労します。守備の戦術の話をしてきていませんでしたからね。よい意味では新鮮ですが、高校生までの時間が勿体無かったなと思いますね。中学卒業してこっちにきたかったくらいです(笑)
それだけスペインサッカーは奥が深いということでしょうか。
こちらに来ないとわからないことが必ずありますからね。やっぱりどんどん来て欲しいと思いますね。やっぱりサッカーをたくさん見ますよね。こちらでもダム(バルセロナ市内の強豪クラブ)とか見て学ぶことたくさんあるじゃないですか。あの年代から組織的にオーガナイズされていますし、とても良いサッカーしていますよね。
やはり指導者でこちらに来てこの環境があるからサッカーを見る視点が変わりますし、加えて自分が第一監督で戦うとなると余計にアプローチや考え方に違いが出ますね。選手をしている日本人の友人も言っていましたが、スペインへ来て本当に大事なことを感じて理解しないといけないと言っていました。本当に学ばないといけいないものがあるのです。
スペイン人と日本人はサッカーに対する理解が異なっていますからね。それ自体は高校生であってもスペイン人はサッカーを理解していますよね。それがなぜなのかと言えば、低年齢の時からきちんと指導を受けているからです。それをきちんと伝えられる指導者がいてアレビンの頃から学べる環境があるんですよね。
ということは、指導者がまずはサッカーをしっかりと知っていなければならないですよね。そのために指導者の為の学校があります。この差は大きいですね。シーズンは始まったばかりですがためになる経験をしていますね。
目標としては色々な経験をして成長できれば良いと考えていましたが、まだ3ヶ月ながらも面白いですね。来年どこにいるかはわかりませんが(笑)
チームとしては正直優勝は難しいですが一年目の子達なので16チーム中真ん中くらいで終われれば良いと考えています。対戦相手の全チームの分析をしましたが、ほとんどがアレビンの2年目のチームばかりですから真ん中でも十分だと思います。あとは子供達が多くのことを学んでくれたら良いですね。
チームの調子はどうですか?
初めは引き分けのスタートでしたがそのあとで2連敗してしまったのがかなり酷くて、2桁失点もしていた守備の状態から比べたら、その後3連勝して1分して今日負けてしまったのですが失点も減っています。自分の中では良くはなっているのではないかなと感じています。でもまだまだこれからですね。
(選手と共に試合開始を待つ高田さん)
日々の一日が戦いであり、それを週末で評価されるというサイクルを繰り返して成長していますね。
その環境がとても大きいですね。ちゃんと練習しないと毎週リーグがありますし、試合から逆算するとその為の準備をします。その緊張感と責任感が伴う環境があるので1年通して成長できると思いますね。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
若干20歳という若さでスペインで監督業に就いた高田さん。決して担当するチームのレベルは高くはないですが、チームをマネジメントし結果も求められるプレッシャーの中で日々戦うサイクルはまさにプロと同じ経験をし、日本の同世代の指導者仲間からも羨ましがられているという環境で大きく成長しています。
日本では20歳の指導者というと「アシスタントコーチ」であることが多く、チームを任されて責任を伴う監督業に就くことはなかなか難しいことでしょう。しかし、スペインでは1部からカテゴリ分けされたリーグ戦が定着しているので若い指導者でも「チーム率いること」ができるチャンスがある環境がありますし結果を出せば上がっていくことも可能なシステムがあります。これこそがスペインに来て指導者として経験をつむ大きなメリットの一つです。高田さんが今シーズンを通してどのような経験を積んで成長していくかどうかはプレサッカーチームスタッフもとても楽しみにしています。
◼︎バルセロナで開催のグローバルな指導者育成プロジェクト『PSTアカデミー』
スペイン語を習得し、スペインのサッカーコーチライセンスの取得をするならこちら!
あなたもスペイン人のチームを率いて本物のサッカー監督になってください。
http://www.spain-ryugaku.jp/soccer/
ご希望の留学期間に合わせてコースをお選びいただけます
2017年9月スタート21ヶ月ハイクオリティコース
2018年1月スタート18ヶ月ベーシックコース
お問い合わせはinfo@presoccerteam.comまでお気軽にご連絡ください。(担当:坪井)
#プレサッカーチーム #PSTアカデミー #pst #スペイン留学 #バルセロナ留学 #スペイン #バルセロナ #サッカー留学 #コーチ留学 #サッカー #バルサ #barcelona #spain #espana #サッカー監督 #監督
0コメント