日本人が築いてきた歴史を感じるクラブで指導するアカデミーOB

こんにちは。今回はPSTアカデミーの卒業生の様子をお届けしたいと思います。

2016年の6月にプログラムを終えた3期生の中にはバルセロナに残って指導者としての経験を積んでいる人もいます。今回はこれまで過去に日本人の指導者も在籍していたバルセロナでも100年以上の歴史を誇るフピテルの育成年代のチームで指導をする矢沢さんにお話を聞きました。決してレベルの高い選手たちがいるわけではない環境の中で指導者として試行錯誤し、自分が考えたことを実践しているという矢沢さん。今シーズンのチームビルディングや、スペインのコーチングスクールで学ぶことの意味などを語っていただきました。


(右が矢沢さん、左は同じフピテルで指導しているPSTアカデミー2期生の石黒さん)

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‐コーチングスクールを卒業していよいよサッカーの現場に監督として立ちました。今はどこのクラブに所属しているのかを改めてご紹介ください。

今はフピテルというクラブのアレビン(U12)のEチームを担当しています。リーグはテルセラデイビジョンという上から4つ目のカテゴリーでリーグを戦っています。現在は5試合やって1勝3敗1分ですね。


‐どのような経緯でフピテルには入ったのですか?

はい。私よりも先にフピテルで指導していた力蔵君(PSTアカデミー2期生)がいて、私もチームを探していたので彼にコーディネーターを紹介してもらいました。そして事務所に行き話をしたら、「お、いいよいいよ」という返事をいただけました。その辺はさすがに日本人慣れしているクラブだな、と思いました。このクラブは日本人への評価は高いのですぐに入ることができました。その後、そのコーディネーターが事情があってすぐにやめてしまい今のコーディネーターがやってきましたが、引き続きの体勢でやらせてもらえるようになりました。


‐その辺はこれまで頑張ってきた日本人におかげでしょうね。

そうですね。そうでなければまずフピテルには入れなかったでしょうし、入った後にコーディネーターが代わった時に「君は知らないよ」と言われてしまった可能性もあります。


‐では、日本人指導者であることに対して期待されていることなどは感じますか?

いえ、それはないです。私はまだこのクラブでは新人ですし、監督としても一年目だし何かを期待されている感じは全くありません。プレッシャーも正直なところありませんし、自分のやりたいようにやれる環境です。結果が出なくても「パシエンシア(忍耐)だ」と言ってくれます。


‐コーディネーターも優しく見守ってくれているんですね。

はい。で選手の親たちもこの年代では一番したの実力の選手たちのグループなので、親も「この子供たちはそんなにレベルの高い選手ではない」と理解しています。ですので別に試合に負けても、「No pasa nada(たいしたことじゃないよ)」と言ってくれます。結果よりも子供が成長すれば良いという意見なので親からのプレッシャーもありません。


‐今シーズンチームを率いるに当たって、チャレンジしようと決めていることなどはありますか?

あります。リーグのほとんどのチームの視察を終えたのですが選手のクオリティだけでいえば16チーム中で12、13番目です。であれば順位としては8位目標に考えています。だたそれだけだと物足りないので、上の抜けている別格の4チームのどこかを喰ってやろうということを目標に考えています。


‐数字的なことはそういうことですね。ではチームビルディングを含めて内容面ではいかがですか?

今持っているグループの選手たちは昨シーズン280失点しているんですね。


‐その数は凄いですね(笑)

はい、その280失点しているチームのディフェンスをまずは向上させたいと思っています。150失点以下に減らすことです。戦術的にはディフェンスを改善させたいです。そこまでクオリティの高い選手たちではないですから攻撃のことを先に取り掛かってもしょうがないなというところもあるので最初は守備からビルディングしようと思っています。ですので行っているトレーニングも守備が多いです。一週間のうちでずっと守備をやるわけではなく少しは攻撃は取り組みますが8割は守備ですね。


‐やっぱりこれまで全然トレーニングされてきていないなと感じたのですね。

そうですね。マークをする時に「そこにポジション取るの?」とかありますよ。相手の選手の前側に立っていたりとか全然あります。


‐それはスペイン人であっても教わっていないということなのですね。選手と見た時に「攻撃しかやってきてないんだな」と感じたのでしょうか?

いえ。というよりも去年のチームの練習をちょっとだけ見たことがあるんですがドリルトレーニングがほとんどでした。ということは戦術練習がゼロなんですね。まあ、それはこうなるなという感じです。かと言ってもともと運動能力が高い選手たちではありませんから、ドリルを繰り返してもテクニックがグンと伸びるわけではありません。足の動き方も全然ぎこちないですし、ドリルはドリルで必要なのは分かるのですがそればかりだとこうなってしまうというのがわかりました。


‐ということはなるべく対人のような実践に近い状況の中でトレーニングしたいとしてもカテゴリーとしてはエリートではありませんからバランスを取ると思うのですが、そのバランス感での気づきなどはありますか?

最初はポゼッションをやるにしても継続性を持たせたいオーガナイズをしていたのですが、あれくらいのレベルの子たちだと継続性があると頭の中がごちゃごちゃになってきてプレーもごちゃごちゃになってきてしまいます。求める現象があるのですがなかなかでてこないんです。だから最近は選手のレベルに合わせて、本当は継続性があったほうが良いのですが、敢えて一度ストップして一度整理してからもう一度始めよう、という風にオーガナイズを変えています。


‐そこは気を使っている部分なんですね。

そうですね。そこは選手に合わせようと思っています。こちら側が正しいと押し付けるよりもそこは選手に寄り添っています。オレアーダのような練習でも守備側が奪ってからその後にボールをここまで攻めようという設定にしていたのですが、奪った瞬間にごちゃごちゃになってしまっているので一度そこで切ってから、「はい次のグループ」というようにしています。少しは自分が想定した現象が出やすくなりました。選手が伸びたかどうかはもう少し続けていかないとまだわかりませんが。



‐プレシーズンから2か月くらい経ちましたがパフォーマンスに変化は見られましたか?

守備は凄く良くなってきています。もちろん1vs1で選手のクオリティの差でやられてしまうことはありますが、それまでのボールを誘導することだったりカバーリングだったり、スライドすることだったりとかは凄く良くなってきています。


‐守備がある程度形が作られるまでには時間がかかるとは思いますがその後に攻撃に着手していくのですね。

そうですね。


‐そのプランニングをする際に、守備から入るようにした理由を教えてください。

まず守備が脆い状態で攻撃をやっても簡単にやられてしまうゲームが続いてしまうのでまずは守備からという感じです。それから、ゲームを想定した時に私たちのチームはボールを持つ時間はどうしても多くありません。では、ボールを奪い返すというとこからスタートしようと。奪い返さないと攻撃もスタートしませんから、奪い返すことに焦点を当ててその後に攻撃のことを考えようと思ってこのようなプランニングにしました。


‐スペインだとボールポゼッションなど攻撃系が多いイメージです。スペイン人でもそうなる中で、普通だったら攻撃から入ると思います。私もそれで失敗をした経験があるのですが、守備から入って形を作ってから次に行くと言うのは私も失敗の経験から感じたことなのですが、こういうことは他の人との話から学んだことなのでしょうか?それとも自分の経験から感じていることなのでしょうか?

両方ですね。他の方から学んだこともそうですし、いろんなチームを見てきて思ったことでもあります。この前のSayfoot(バルセロナでのサッカー関係者の集まる団体。定期的に指導実践会を行っている)でもそういう話になりました。とある方は15歳までは守備のことはやらないと。なぜなら選手は攻撃している時が一番楽しいからだと言っていました。それはそれで一つの考え方だと思いますが、でも選手、特にスペイン人は目の前の試合に勝ちたいと思っているはずです。では勝つことから逆算すると、私は守備もやらないと攻撃にも移れないと考えているので、最終的には守備からかなと思います。


‐攻撃も良くなっている感触はありますか?サッカーは全ての要素が関わっているスポーツです。変な失点がないからカウンターが発生するようになったとか。

失点はあるのですが、完全に崩されての失点はあまりなくなりましたね。セットプレーでの失点と、こちらのビルドアップのミスを突かれての失点などが今のところは多いです。そういう意味では、今のカテゴリーではこのような形での失点は仕方ない部分です。ですので、これから攻撃の改善もしていけばそのような失点も減っていくはずです。ですからある程度守備の形にはなってきているという感触はあります。


‐やっていることが着々と目に見えてきているのは良いことですね。

はい。ちょうど今週末の相手が同じレベルのチームなのでボールを持てる時間がありそうなので攻撃の部分の練習もしようと思っています。

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次回に続く


◼︎バルセロナで開催のグローバルな指導者育成プロジェクトは『PSTアカデミー』

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http://www.spain-ryugaku.jp/soccer/

2017年9月スタート21ヶ月ハイクオリティコース

2017年1月スタート18ヶ月ベーシックコース


お問い合わせはinfo@presoccerteam.comまでお気軽にご連絡ください。(担当:坪井)

PreSoccerTeam oficial

スペインのバルセロナに拠点を置くサッカー指導者育成事業をメインに活動を進める PreSoccerTeam(プレサッカーチーム) PSTアカデミーや日本各地の支部の活動の様子をお届けします。

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